優しい言葉  やさしいことば         かなりギャグかも?












「また喧嘩をしたのですか?」


呆れたように、弁慶は溜息をつく。


「…別に喧嘩をしたわけじゃない。少し口論になっただけだ」


九郎は不機嫌そうに腕を組み、ふいと顔を逸らした。


やれやれ…と弁慶は苦笑をこぼし、そしてにっこりと満面の笑みを見せた。






「毎回そんなことでは、望美さんに嫌われてしまいますよ」






ぴたり    と、九郎の動きが止まる。






「良いんですか? その時は、僕が望美さんをもらってしまいますけど」


「良くない! それだけはだめだ!」


予想もしなかった言葉に、九郎は思わず身を乗り出し、声を荒げる。






確かに口論ばかりしてはいるが、九郎はこれでもちゃんと望美のことを好いているのだ。






九郎があまりにも予想通りの反応を示すので、弁慶は思わず噴出した。


「ふふ…すみません、九郎。冗談ですよ」


「か…からかうといっているだろう、弁慶!!」、


恥ずかしさから顔を紅潮させて動揺を顕にする九郎に、弁慶は息を整え、ニッコリと笑む。


「たまには、優しい言葉でもかけてあげたらどうですか?」


「優しい言葉? 例えば、どんな言葉だ?」


「そうですね…」






例えば。






弁慶はニッコリと微笑み、九郎に近づく。






   君は本当に可愛い人ですね。

   ずっと、この腕の中に閉じ込めておきたいくらいに…

   …おや、顔が赤いですね?

   この花の香りに酔ってしまったのですか? それとも、僕に…かな?

   ふふ…ますます赤くなってしまいましたね。

   そんな君も、僕は好きですよ。

   愛しい僕の天女。






「…といった所でしょうか。ああ、照れながらではいけませんよ。
どうですか、九郎?」


弁慶は、何事も無かったかのようにニッコリと微笑む。






優しい言葉というよりも、ただの口説き文句ではないか!






などとは死んでも突っ込めず、
九郎は今までにないくらいの恥ずかしさに九郎は顔を真っ赤にする。


「…すまない、弁慶。俺には無理だ」


真剣な顔で謝罪を述べると、九郎は弁慶に背を向けて歩き出した。






「少し、からかいすぎてしまいましたね」


すみません、九郎…と謝る弁慶の顔には、楽しそうな笑みが浮かんでいた。










---------------------------------------------------------------------










どうしたらよいものか。






九郎は両腕を組み、大きな溜息をついた。


優しい言葉といっても、弁慶のような台詞はとても言えない。

アレをどうすれば照れずに言えるというのか。






「九郎さん!」






突然背後から呼ばれ振り返った九郎は、思わず後ずさった。


「の、のののの望美!?」


「な…なんですか? そんなに驚かなくても…」


望美は驚いたように瞳をパチパチさせ、一呼吸してから頭をぺこりと下げた。


「さっきはごめんなさい! 私が言い過ぎちゃっったから…」


「いや、俺が悪かったんだ! その、お前の気持ちも考えずに…」






すまなかった。






まっすぐと望美の目を見つめ、九郎は謝罪を口にする。


すると、望美の顔にはいつものような笑顔が戻った。


「これで…仲直りですね」






まるで花のような笑顔。


九郎が好きなのは、この笑顔なのだ。


そこで不意に思い出すのは、あの言葉。







     たまには、優しい言葉でもかけてあげたらどうですか?








優しい言葉。

どういった言葉をかければ、望美は喜ぶのだろうか?






「九郎さん?」


「な…なんだ?」


「どうしたんですか? いきなり黙り込んで…」


不思議そうに、望美は九郎の顔を覗き込む。


「いや…その…」


「はい?」


望美は、静かに九郎の言葉を待っている。


今が優しい言葉をかけられる、いい機会だ。


九郎は優しい言葉を必死に探す。






そして。






そうか! 俺が思うことをそのまま言えばいい!






「望美!」


「は…はい?」


がっちりと両肩を掴まれ、望美は驚いたように目を丸くする。






「お前は、綺麗だ」






「…はい?」


唐突に紡がれた言の葉。


あまりにも脈絡が無くて、望美は言葉を失う。






「髪も、指も、その唇も、全部俺だけのものにしたい」






「はい〜!?」


少しずつ、望美の顔が赤くなっていく。


だが、言葉を捜すことに必死になっている九郎は、そのことに全く気付かない。






   お前は、笑顔が一番良く似合う。

   その…俺も、お前の笑顔は嫌いじゃない。いや、むしろ好きだ!

   俺に向かって笑いかけるその姿が、すごく好きなんだ。

   お前の微笑みが…俺だけに向けられているんだったら、すごく嬉しい。

   あ、お前の笑顔だけが好きなわけじゃないぞ!

   怨霊と戦うお前も綺麗だと思うし、その…なんというか…お前の全てが好きなんだ!






「だから………ん? 望美?」


いったん言葉を中断し、見てみた目の前の望美は、リンゴのように…それ以上に赤くなっていて、
今にも倒れてしまいそうであった。


「その…それは、告白…ですか…?」


恥ずかしくてまともに顔が見れず、望美はどんどん俯いていく。






     告白?






そう言われて、よくよく自分の言ったことを思い返してみる。


よく思い出してみると、何度も『好き』を連呼していた…ような気もする。






「〜〜〜〜〜〜〜!!!!」






今更ながら、九郎の顔が見る見る赤くなっていく。


自分が心に思うことを言っているうちに、

いつのまにかそれは愛の告白になっていた。


「いっいやっ、そのだなっ! これは…っ」


動揺のあまり声は裏返り、言葉が出ない。






「そ…そのっ、すまんっっ!!!!」


考えられないほどの速度で、九郎はその場を立ち去る。






「く…九郎さん?」






望美がそっと顔をあげたその時、

そこにいたはずの九郎の姿は、

もうどこにもなかった。












その後、

しばらく九郎と望美は顔を合わせることが出来なかった。






そんな二人を見て、

楽しそうな弁慶がいたとかいないとか(笑)
























創作アンケートにて投票いただいたキャラで創作を書こうということで書かせて頂いた九郎創作ですv

えっとですね、まずですね、
大変申し訳ありません(スライディング土下座)

「望美が赤面しまくるぐらいの恥ずかしい台詞や行動をさらっとやってのけ、後で恥ずかしさに逃げると言う感じの甘々で」

という最強に難しい(笑)リクエストを頂きまして挑戦したやつなわけですが…

ただのギャグになりました
(オイ)
激ムズだよ、九郎!!!!(爆笑)


*注:弁九ではありません(爆笑)*



















↑お気に召しましたら、ポチっとお願いしますv